≪裏表紙より≫
あらゆる願いをかなえることができる万能の力 “一色” をめぐる戦いの物語――。
時間を止めることができる能力 「停眼」 を持つ桐生慎太郎は、同じく戦いの参加者である相馬香澄から逃げる最中、月の女神 『麗しき月の夜』 と同じ名を名乗る謎の美少女・イリスと出会う。慎太郎を勝者にするためにやってきたというイリスは、さっそく慎太郎に “契約” を迫るのだが……。強い思いを胸に剣を振るう香澄に、慎太郎は打ち勝つことができるのか!? そして絶対強者・新堂遊馬が二人の前に姿を現す――。傍若無人な女神(?)イリスをパートナーに、慎太郎の戦いが始まる!!
とりあえず内容に関係ない部分だけど、脱字が多すぎる。大量刊行で出版物としてのクオリティに手が回りきらなかったんじゃないかと勘繰ってしまいます。そういう面の体制をしっかり整えていかないと、出版社としてのイメージがダウンしてしまうかも。
で、内容ですが…、不満点ばかりが連なっております。
シリーズ化前提で書かれているのだと思うけれど、説明不足過ぎる。元になるストーリーがあって、それを読者が知っている事を前提として書いているような印象を受ける。
まずバトル物ならば、主人公の経歴なり、強さの秘密なり、流派なり、何か戦い方のベースとなるものの情報がないと、さっぱりイメージが沸いてこないし、やたら自信満々な慎太郎の態度も納得がいかない。別に武道とかじゃなくて街の不良を一掃したような喧嘩自慢とか、内容はなんでもいいのだけれど、戦う事に自信があるなら 「停眼」 以外のベースとなる根拠は示すべきだと思う。
また、「停眼」のリスク面について曖昧すぎて、結構連続使用しているため、とっておきの奥の手という感じの重さが感じられない。
キャラクターの性格付けという意味では香澄のほうが剣道と言うルーツがある分、キャラクターとしては分かりやすかった。このお話の中で、最も設定がしっかりしていた人物ではないかと思う。慎太郎を信用した理由も分かりやすいし。
遊馬は物々しい逸話がある割には、目的を達成するための負けたらやり直しの効かない戦いにおいて、本気を出さないで逆襲を喰らって、挙句負けてしまうって言うのはどうにも納得がいかない。戦う覚悟があるないということを口にするけれど、慎太郎に対してずいぶんと行動が甘い。でもその割に、香澄の事はずいぶんと念入りに痛めつけていたりして、行動に一貫性がない気がする。
登場シーンも会話もかなり多いのに、いまいちイリスという人物がイメージできなかった。結局イリスが来た世界がどんな場所なのかもさっぱりわからないし、異界からこの世界に王になるためにやってくるという目的はかなり重要なものではないか、と読んでいる側としては思うのだけど、深刻さがまったく感じられない。わがままに育てられた深窓の令嬢って感じでイメージしておけばいいのだろうか、キャラクターを掴みかねる…。
あと、猫はエロ過ぎると思う。そのせいで余計にキャラを掴みかねているかも。
義理の姉の静華は、過去に何があったのかとか、情報が少なすぎて慎太郎との関係性がよく分からない。完全に読んだ字のままに捉えればいいのだろうか。
単純に見たそのまま慎太郎を本当に案じていて、古風な考えの大和撫子的女性キャラなのか、それとも、慎太郎というかその後ろにある “一色” のことだけを見ていて、状況が変わればあっさりと慎太郎を見捨てるような存在にも思えてしまったり。慎太郎との絆となる出来事が描かれていなかったり、ずっと玄関で待ち続けているっていうのにやりすぎ感を感じて、逆に不気味に思えてしまうからかも。
“一色”についての説明も、もう少し欲しかった。
参加資格とか、世界規模なのかとか(話の大きさからすると世界規模なのだろうとは推測できる)、他の資格を持つ者とどうやって遭遇するのかとか、多少説明臭くなっても誰かには話してもらわない事には…。
結論としては、やっぱり情報不足、説明不足から来る、読者置いてきぼり感が強いせいで、不満点ばかりになってしまったんじゃないかと思う。個々の要素としては悪くない部分もあるのだけれど、どうにも物語の中に入り込めなかった…。
ふと思ったのは、これは少年漫画として絵で描かれていれば、意外にしっくり来るのかもしれない。