≪裏表紙より≫
「過去を視る」力を持つ帝国の史官・ヤエト。病弱な彼は、赴任先の北嶺で地味な隠居生活を送ることを夢見ていた。しかし、政治に疎い北嶺の民に悩まされ、さらには北嶺に太守として来た勝ち気な皇女に振り回され休まる間もない。だが、北嶺を知るにつれ、ヤエトはこの地に帝国の秘密が眠ることに気づいていく…。歴史の光陰が織りなす壮大なるファンタジーロマンの扉がいま開かれる―。
病弱主人公ここに極まれり!
激しく病弱・隠居生活・年齢は36歳とあまり他に類を見ないヤエトという帝国の史官が主人公(とはいえ、作中では誰もがもっと若いかと思ったと言っているから、見た目20代後半くらいらしい)
その辺の設定とか、あらすじとか、挿絵とかをパラパラっと見てちょっと興味を惹かれて買ったわけなんですが。2ヶ月ほど積読してました。
それにしても病弱な主人公というのはいないでは無いけれど、階段を上るだけでも息切れがして一苦労、頭痛は日常的、ちょっと無理をすると寝込んでしまうという、いまだかつてここまで病弱な主人公はちょっと見たことがありません。
ある事件のせいで左遷された辺境で、隠居生活を夢見ていたヤエトだが、生活をしていくためには仕事をしないといけない、その上何の間違いか突然太守としてやってきた皇女の副官として任命されてしまい…。
何かというと大声でののしりあう帝国に帰順して間もない北嶺の民をまとめ、若い皇女の行動を諌め、北嶺の民と皇女に振り回されながらも、着実に仕事をこなすことで皆の信頼を得ていきます。しかし、それはすなわち仕事が増えることを意味するのであった。本当に苦労が耐えない人です。
皇女の護衛の騎士団の隊長としてきたルーギンが、過去のヤエトとの関係などから、何かと協力してくれたからよかったが、彼がいなかったら序盤でヤエトは帰らない人になっていた可能性もありうるな…。
隠居願望や病弱なため普段から死を身近に感じているせいか、仕事や身分というものにあまり執着を持たないヤエトが、まだ14歳という少し子供っぽいわがままなところのある皇女に歯に衣着せず意見を述べていくやり取りが面白い。
皇女も人の意見を聞き入れ自分に非があると思えば素直にわびるようなところがあって、そんな皇女の性格のせいか最初は反発していた北嶺の民も、自然と皇女を受け入れていき、慕うようになっていきます。
病弱なヤエトだが、周りの人の評価が面白い。
ヤエト 「御意。怖いもの知らずの男です」
皇女 「そうか?そなたほどではないと思うが」
そこでふと思い出したというように、ルーギンは無遠慮にヤエトを眺めた。
ヤエト 「なんですか」
ルーギン 「いや、前にも言ったと思いますが、ほんとうに、無駄に勇敢だなと」
本人は納得がいかないようですが。
そんな感じで、北嶺の民や皇女との信頼関係を深めていく話と、ヤエトの「過去を視る力」をきっかけとして徐々に紐解かれていく北嶺に隠された歴史、ひいては北嶺の秘密とが織り成すようにして展開していく物語に休む暇もなく引き込まれていきます。官服の袖も大活躍(?)
お話のクライマックスの並んで座ったヤエトと皇女がいいです。
二人の微妙な距離感を表すような、手をつないだ分だけ少し距離が縮まった。そんな感じがします。
皇女にとっては、身分にはばかりなく意見をいうヤエトは、今までに見たことが無いようなタイプの人間で、結構気になってはいるようなのですが、まだ恋というには少し足りない感じですね。信頼関係は申し分ないですが。
今後の二人の関係がどう進展していくかというところも楽しみな点です。
これは色々な人に読んで欲しいです。超おすすめ!
上巻を読み終えた翌日には、既に出ていた下巻を買って一気に読破しました。
幻狼ファンタジア文庫は新レーベルなので、手に取ったことが無い人もいるかと思います。本屋に行ったら、この機会にぜひ手に取ってみてください。
なお、いずれ続刊が出ることも決定しておりますので、楽しみにしつつ気長に待ちたいと思います。
追記:
作者さんのブログにて感想用の記事がありますので、読んだ方は感想やトラックバックをすると励みになるかと思います。私も早速トラックバックを…